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宇都宮大学国際学部国際文化学科

2010 年度 卒業論文

離島における教育政策の課題と新たな可能性

~離島留学・小中高一貫教育・公営塾を対象に~

指導教官名 中村祐司

学籍番号

070553M

論文執筆者名 平田真美

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要約

今日、離島地区の教育環境は、どのようになっているだろうか。自然に恵まれ、都会の ような騒々しさもなく、のびのびとした環境のもとで子どもたちは学んでいるのか。しか し、このようなイメージとは裏腹に、離島地区にある多くの学校は、少子化による生徒数 の減少や、それにともなう学校の小規模化、教員数の減少といった問題に直面している。 離島地区において、少子化は、高齢化とともに今後一層深刻化していくと予想されている。 そのため、各学校は小規模校というハンディをいかに克服し、教育環境を整える政策を実 行できるかに、その学校の存続がかかってくる。また、学校を始め、その他教育機関が整 っていない島には、外から人が入ってくるどころか、島を支えていくはずの世代まで、子 どもを連れて島を離れてしまう。つまり、離島のような地域にこそ、教育は極めて重要な 要素なのである。 本論文では、離島地区における教育環境の向上を目指し、長崎県・島根県・沖縄県とい った離島県で実施されている特徴ある政策に目を向けた。中でも、離島留学・小中高一貫 教育・公営塾という3 つの政策に着目し、それぞれの事例研究を通して離島地区の教育政 策の今ある課題と、今後の新たな可能性を論じた。第1 章では、離島の概要を整理した後、 離島地区が抱える少子化による生徒数不足・学校規模縮小といった教育の問題点を述べる。 第2 章では、「離島留学制度」、第 3 章では「小中高一貫教育」に着目し、それぞれ数島の 事例をあげ制度の課題や展望を考察する。それらを踏まえたうえで、第4 章では離島教育 の新たな展望として、島内の教育環境の向上をテーマに論じる。

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目次

要約

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図表一覧

・・・4

はじめに

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第1章 離島地区における教育の現状

第1節 離島地区の概要 ・・・6 第2節 離島地区の学校基本データ ・・・7 第3節 長崎県の離島地区の現状 ・・・8 第4節 長崎県における教育の現状と課題 ・・・9 (1)長崎県の教育方針 (2)長崎県の学校教育の現状 第5節 長崎県の離島地区の教育現状 ・・・10

第2章 離島留学制度をめぐる取り組み

第1節 離島留学制度の概要 ・・・12 (1)鹿児島県-南種子町の事例「宇宙留学制度」 (2)北海道-利尻町の事例「海浜体験留学」 第2節 長崎県における高校生の離島留学制度の概要と事例 ・・・13 (1)五島高等学校の事例 (2)猶興館高等学校大島分校の事例 第3節 離島留学制度の展望 ・・・16 (1)離島留学制度の優れた点 (2)離島留学制度導入に関する問題 (3)離島留学制度の新たな展望

第3章 離島地区における(小)中高一貫教育の実態

第1節 中高一貫教育とは ・・・18 (1)導入の趣旨

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3 (2)実施形態・実施状況 (3)都市部と過疎地での導入目的の違い 第2節 長崎県における小中高一貫教育の現状 ・・・19 第3節 佐世保市宇久町における小中高一貫教育の在り方 ・・・20 (1)宇久町の概要 (2)小中高一貫教育を実施するまでの経緯 (3)宇久地区における特別な教育課程の内容 (4)宇久町の小中高一貫教育を通して

第4章 離島教育の新たな展望~島内の教育環境の充実へ~

第1節 島内における積極的な教育環境づくりの重要性 ・・・23 (1)島根県海士町の事例 (2)沖縄県北大東島の取り組み 第2節 島外と連携した教育の推進 ・・・28

おわりに

・・・29

あとがき

・・・31

参考資料・参考

URL・インタビュー協力

・・・33

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4

図表一覧

図表1-1 離島地区の人口推移 ・・・7 図表1-2 離島地区における保育所・学校状況 ・・・7 図表1-3 長崎県・県下離島の人口推移 ・・・8 図表1-4 長崎県の離島地区における保育所・学校状況 ・・・10 図表1-5 長崎県の離島地区における新規高卒者の進路状況 ・・・11 図表2-1 長崎県で離島留学制度を導入している高校の実施例 ・・・14 図表3-1 宇久高等学校生徒数(09 年度) ・・・22 図表4-1 海士町教育委員会の構成図 ・・・24 図表4-2 海士町における島内の連携のイメージ ・・・26 図表4-3 北大東島の教育環境 ・・・27

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はじめに

現在、日本の教育現場には大きな変化が起きている。2010 年 3 月 31 日には「高校無償 化法」が参院本会議で与党などの賛成多数で可決成立し「子ども手当法」に続き、民主党 が昨年の衆院選でマニフェストに掲げた目玉政策が実施された。これにより同年4 月から、 公立高校の授業料無償化がスタートし、私立高校に対しても就学支援金の助成が始まった。 しかし、新たな政策が始まる一方、文部科学省は、来春から小学校で使われる教科書の検 定結果を公開し、ページ数が現行教科書に比べ全教科平均で 25 パーセント程度増加する ことを発表した。これは、改正教育基本法や新学習指導要領を反映した9 年ぶりの全面改 訂で、「ゆとり教育」が本格化した 2000 年度検定比では 50%増と大幅に厚みを増し、い わゆる子供の学力低下を招き失敗に終わった「ゆとり」との決別が鮮明になった。このよ うに教育現場において続々と新政策が行われる中、地方においては少子化に伴う高校や大 学の定員割れが問題となるほか、名門大学の中学・高校の開校1といった流れが話題を集め ている。 本研究では、大きな変化を遂げる教育現場より、筆者の地元であり日本最多の離島を有 する長崎県の離島地区における教育事情を中心に、離島教育の現状や課題について述べる。 近年離島地区にあっては、少子化や過疎化に伴う生徒不足や学校規模の縮小といった問題 が顕著になり、各県や自治体はその対策に負われている。地理的ハンディを抱える離島地 区ではあるが、離島ということを理由に教育水準の低下があってはならない。逆に教育環 境の充実は、離島自体の魅力となり得るのではないか。離島地区における離島留学制度・ 小中高一貫教育・公営塾のという3 つの取り組みに焦点をあて、島という小さな教育現場 より教育の有り方を考察していきたい。 1 今年度(2010 年)より佐賀県唐津市に開校した早稲田佐賀中学・高校など。

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第1章 離島地区における教育の現状

近年離島地区では、過疎化や少子化による生徒数の減少や学校規模の縮小、教員数の減 少といった問題が発生している。複式学級は年々増加傾向にあり、学校の統廃合も進む中、 離島地区における教育水準の低下が問題視されている。本章では、全国の離島地区の概要 を整理したうえで、日本最多の離島県である長崎県の離島地区における教育の現状・課題 を把握する。

第1節 離島地区の概要

2010 年現在、日本は 6,852 の島嶼により構成されている。 このうち本州、北海道、四 国、九州及び沖縄本島を除く6,847 島が離島と位置づけられ、258 島の有人離島が離島振 興法2による離島振興対策実施地域に含まれている。離島振興対策実施地域には、76 地域 (258 島、110 市町村)が指定されている 258 島の面積は 5,225k㎡で、日本の総面積に 対し1.38%に過ぎない。近年離島地区にあっては、少子高齢化や若年層の島外流出が深刻 な問題であり、人口減少に歯止めがかからない。離島振興対策実施地域の人口総数は長期 間にわたり減少を続け、その減少率は1965 年から 1970 年の 12.1%をピークに、昭和 50 年代からは鈍化傾向となり、平成12 年から平成 17 年までの最近の 5 か年では 8.2%とな っている。また、年齢階層別人口割合は、 14 歳以下の年少人口は 12.6%(全国 13.7%)、 15~64 歳までの生産年齢人口は 54.4%(同 65.8%)、65 歳以上の老年人口は 33.0%(同 20.1%)となっており、 特に高齢化比率(老齢人口)の 33.0%は、過疎地域と比べても高 い状況となっている。 2 1953 年に制定され、以降 10 年ごとに(改正)延長されている。2003 年に、離島振興法の 延長(第5次)として、「離島振興法の一部を改正する法律」が公布され、適用期間が 10 年間延長された。

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7 図表1-1 離島地区の人口推移 日本離島センター「図表で見る島の動き」より筆者作成

第2節 離島地区の学校基本データ

2008 年時点で、日本の離島地区には、550 校の小学校・331 校の中学校・65 校の高校 が存在する(図表1-2)。小学校、中学校と比較すると高校数は一段と少なくなっており、 離島における高校の少なさ、離島の多くは高校を有していないことが見てとれる。 図表1-2 離島地区における保育所・学校状況3 保育所 幼稚園 小学校 中学校 高等学校 (保育所・幼稚園・学校)数 387(2) 191(1) 523(27) 331(8) 66(3) (乳幼児・園児・児童・生徒)数 15,589(23) 5,751(9) 38,809(67) 21,016(316) 17,418(1,227) 2008 離島統計年報より筆者作成 3 「学校数」欄には、本校を上段に記し、分校を()書きで下段に掲載した。 「生徒数」欄には、離島に所在する学校に在学する生徒を上段に、本土(法律指定外の島 を含む)の学校へ通学(寄宿者を含む)する生徒を()書きで下段に掲載した。 (単位:人) 60 年 65 年 70 年 75 年 80 年 85 年 90 年 95 年 00 年 05 年

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第3節 長崎県の離島の概要

4 長崎県は、壱岐対馬や五島列島といった日本最多の 594 の島嶼からなる離島県である。 594 島の中には、73 の有人島があり、このうち離島振興法の指定を受けた 54 の有人島の 人口は、1960 年国勢調査時がピークの 34 万 61 人で、県全体の 19.3%を占めていた。2005 年に行われた国勢調査では、人口は15 万 5,614 人となり、県全体の人口の 10.5%を占め ている(図表1-3)。また、面積に関しては、離島地区が県土の約 4 割を有し、長崎県の 特性とも言える地理的環境下にある。離島の基幹産業は、第1次産業(農業・漁業)であ る。就業人口の構成を離島と本土で比較すると、離島の第1 次産業は 21.7%と本土の 7.7% の3 倍に近い割合となっている。 図表1-3 長崎県・県下離島の人口推移 4 長崎県公式ウェブサイトを参照。http://www.pref.nagasaki.jp/(2010 年 12 月現在) 340 1,760 241 1,572 218 1,594 184 1,545 156 1,479 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 (千人) 昭和35年 昭和50年 昭和60年 平成7年 平成17年 県下離島 県全体 長崎県公式ウェブサイトより筆者作成 1960 年 1975 年 1985 年 1995 年 2005 年

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第4節 長崎県における教育の現状と課題

(1)長崎県の教育方針5 長崎県の教育は、国際交流の歴史が息づく郷土の伝統と文化を継承し、豊かな自然を守 るとともに、命の尊さや個人の尊厳を重んじ、公共の精神を身に付け、我が国や世界の平 和と発展に貢献していこうとする調和のとれた人間の育成をめざす。学校・家庭及び地域 住民は、「教育県長崎」の確立のため、自らの役割と責任を認識し、互いに手を携え、県民 挙げて子どもたちを健やかに育むとともに、生涯にわたって学び続けることのできる社会 の実現を図る。 とくに、教育に携わる者は、子どもたちに深い愛情を注ぎながら、その使 命を自覚し、識見と指導力を高め、本県教育の充実と発展に努めなければならない。 (2)長崎県の学校教育の現状 09 年において、長崎県には 401 校の小学校・211 校の中学校・81 校の高等学校がある6 本県の公立小学校における1 校当たりの児童数は、93 年の 278 人から 08 年は 209 人に減 少し、複式学級数も93 年の 150 学級から 08 年は 209 学級に増加している。県は、少子 化の影響により児童・生徒数が減少し、小規模校が多くなっていることを受け、児童・生 徒数の推移や入学動向、各学校の実態に即して学校規模の適正化などを行い、学校の機能 と教育水準の維持向上を図っていくとしている。 また、地域の特色を生かした教育活動を展開し、教育活動の一層の活性化を図るため、 本県離島において、01 年度から奈留(なる)、宇久(うく)、小値賀(おぢか)地区の 3 島で、中 学校と高等学校を通じた6 年間の中高一貫教育を実施している。さらに、03 年度からは「し ま」のもつ教育資源を活用した「離島留学制度」を創設し、五島・壱岐・対馬高校及び猶 興館(ゆうこうかん)高校大島分校において実施している。また、09 年~10 年度においては 「夢やあこがれを抱く長崎県の子ども」育成事業を実施するほか、職場体験やインターン シップの推進や、就職アドバイザー派遣事業等7にも力を入れている。 5 長崎県教育委員会ホームページ http://www.pref.nagasaki.jp/edu/about/plan/index.php 教育方針を引用。(2010 年 12 月現在) 6 長崎県教育委員会ホームページ http://www.pref.nagasaki.jp/edu/stats.php 統計資料 を参照。(2010 年 12 月現在) 7 県立高校10 校を対象に、就職アドバイザーを学校に派遣し、進路意識の高揚及び進路 指導の一層の充実を図る取り組み。

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5 節 長崎県の離島地区の教育現状

現在長崎県の離島には110 校の小学校、62 校の中学校、15 校の高等学校がある(図表1 -4)。しかし、離島にあっては半数近くの小学校で複式学級が編制されるなど、少子化や 過疎に伴う児童生徒数の減少により学校の小規模化が進んでいる。本県における複式学級 のある学校は、小学校数は 94 校で 23%に及び、中学校は 9 校で約 4%に当たる。小規模校 では、子ども一人ひとりに目が行き届き、教師と子どもたちのふれあいが多いなどの利点 がある一方、集団生活の中で切磋琢磨する機会が少ないことや教職員配置などの教育環境 の整備が不十分であり、教育条件の維持向上に向けた取組が必要である。 図表1-4 長崎県の離島地区における保育所・学校状況 2008 離島統計年報より筆者作成 学校の小規模化や統廃合が進む中、県内の離島地区では、島内に高校を有する離島が15 校となっており、多くの島の生徒は中学を卒業後、就職や高校進学のため島を離れざるを 得ない状況となっている。これに加え、島内の高校に進学した学生も、卒業後は島内に就 労場所が極めて少ないことから、実に 9 割の生徒が島外へと流出していく(図表1-5)。 島外転出者の割合(08 年)は、人口の多い壱岐対馬においても約 85%、五島列島地域では 95%、筆者の故郷である宇久島が属する平戸諸島地域に関しては 99%となっており、毎年 3 年月になると若者が一斉に島を離れていく。 保育所 幼稚園 小学校 中学校 高等学校 (保育所・幼稚園・学校)数 96 29 98(12) 60(2) 14(1) (乳幼児・園児・児童・生徒)数 3,666 1,148 8,578 4,843(26) 4,520(33) (単位:人)

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11 図表1-5 長崎県の離島地区における新規高卒者の進路状況 卒業年月 卒業者数 島内 島外 島外転出率 1995 年 3 月 2,471 376 2,095 84.8% 2000 年 3 月 2,078 265 1,813 87.2% 2008 年 3 月 1,492 128 1,364 91.4% 2008 離島統計年報より筆者作成 このような現状を踏まえ、長崎県離島振興計画8では、児童・生徒が減少傾向にある離島 地域において、教育効果を考慮し、学校規模の適正化が図られるよう学校の統廃合を検討 するとともに、各学校の実態に即して施設や情報教育環境の整備を推進することにより教 育水準の向上を図るとしている。この中で、児童・生徒数の減少により生じる余裕教室を、 社会教育施設に転用するなど有効活動することや、離島の豊かな自然環境・景観等を生か した環境学習を推進するために、指導者の養成や体験学習を中心としたエコツーリズムな どの事業を実施し、環境学習を推進していくとしている。 さらに、長崎県ではこれらの政策に加え、全国初の制度として、各離島の特性を生かし た「高校生の離島留学制度」を03 年度から実施している。離島留学制度については、第 2 章で詳しく説明する。 8 離島振興法を基に 2003 年 6 月に制定された。 (単位:人、%)

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第2章 離島留学制度をめぐる取り組み

離島地区に存在する学校は、少子化の影響から、生徒数の確保が重要な課題となってい る。しかし、大半の島では島内の生徒数は減少傾向にあるため、各学校では島内の生徒数 の獲得だけでなく、島外から生徒を取り込むための取り組みを始めている。本章では、全 国的にも珍しい高校での離島留学制度を実施している長崎県から、五島高等学校と猶興館 高等学校大島分校の2 校に焦点を当て、離島留学制度について考察していく。

第1節 離島留学制度の概要

離島留学制度とは、島の小学校や中学校に本土から小学生や中学生を一定期間受け入れ て、学校教育を受けつつ、島ならではの体験(島の自然体験、漁業体験、島の人たちとの 交流)も体験してもらうという制度である9。期間は学校によって異なり、短い場合1 日留 学から可能で、長いものでは1 年単位での留学が可能である。中には、保護者同伴の「親 子留学」を実施する自治体もあり形態は様々である。また、大半の自治体では寮やホーム ステイ先を確保している。 島の地域社会としては、少子高齢化が進む中で、本土から子供たちが来てくれることで 島が活性化するという目的がある。また、いじめや不登校などが社会問題となる中で、離 島留学をした生徒たちが、元気になって本土に戻ってきたという報告も寄せられている。 (1)鹿児島県-南種子町の事例「宇宙留学制度10 鹿児島県南種子町(みなみたねちょう)では、日本で唯一の実用衛星発射基地「種子島宇 宙センター」が町内にあることを活用し、小学生を対象に「宇宙留学制度」を実施してい る。今年度で 16 期生を向かえ入れており、身近に宇宙開発体験が出来るだけでなく、種 子島の大自然の中で数々の自然体験も可能である。南種子町内の小学校に転学を希望する 児童に対し、地区内の受入れ保護者(里親)の協力を得て受入れを実施し、種子島の豊か な自然の中で様々な体験活動を通して心身共に健康な児童の育成を図ることを目的とし、 9 日本離島センターしましまネット http://www.nijinet.or.jp/study_abroad/index.html 離島生活のご案内を参照。(2010 年 12 月現在) 10 日本離島センター資料「南種子町宇宙留学制度実施要綱」より。

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13 留学期間は原則として1年間である。2010 年現在、かかる経費としては、食事などの委託 料が月額6 万円(実親に月額 3 万円、町助成金が月額 3 万円)。PTA会費は里親負担とな っている。実親は、学校教材費や医療費、学用品費、衣料費、通信費、遠足・旅行費、ス ポーツ少年団活動費、その他児童にかかる経費を負担する。 (2)北海道-利尻町の事例「海浜体験留学11 北海道にある利尻町(りしりちょう)では、日本最北の国立公園内にある島として豊かな 大自然を活かし、99 年度より「海浜体験留学」を始めた。対象は中学生で、1 年間の契約 期間の元、町内の仙法志(せんぽうし)中学校への留学が可能である。この取り組みは、留 学生が里親の元にホームステイする「里親留学」だけでなく、生徒の親も島で受け入れる 「親子留学」という形態を取り、テレビや新聞に取り上げられ、全国的に大きな反響を呼 んだ。かかる経費は、里親留学経費月額7 万円の内 3 万円を補助、また、親子留学経費(住 宅寮)月額 3 万円の内 2 万円を補助するなど、留学にかかる費用に対し補助を行っていた。そ れに加え、親子留学用住宅・家具類は町が用意するほか、留学生の長期休業の規制旅費の 一部補助、親子留学保護者への仕事(パート)の斡旋などを行っていた。制度導入後は、道 内のみでなく関東や関西圏からの留学生が島内で学校生活を送るなど制度の充実が見られ たが、徐々に受け入れ側の家族の負担が増加し、「海浜留学」は09 年度をもって終了とな った。

第2節 長崎県における高校生の離島留学制度の概要と事例

長崎県における離島留学制度は、積極的な目標意識や意欲を持った高校生に学習の場を 提供し、充実した高校生活を送ってもらうことを目的とした制度で、日本発の高校生の留 学制度として03 年度より実施されている12。本制度には、島の豊かな自然や文化の中で学 習や部活動に取り組み、夢を達成して欲しいという願いが込められている。高校生を対象 11 日本離島センター資料「海浜体験留学生 募集!」より。 12 長崎県教育庁高校教育課ホームページ http://www.pref.nagasaki.jp/koukou/plaza/index04.html「高校生の離党留学制度のペー ジ」を参照。(2010 年 12 月現在)

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14 とした離島留学制度は全国的にも珍しく、現在県内 3 つの高校13に離島留学が可能であ る。3 つの高校は、それぞれ対馬・壱岐・福江島に1校ずつ存在し、県内の学生だけでは なく、県外からの学生の留学も可能である。また、この制度を利用して海外から留学する こともできる。留学期間は原則として 3 年間で、 本人だけの留学が認められている。留 学生は、五島高校では寄宿舎(寮)利用、その他の 2 校に関しては学校からホームステイ先 の紹介が行われている。 各高校は、それぞれ特徴あるコース設定を行っている。壱岐高校・対馬高校の特徴とし ては国際交流に力を入れており、壱岐高校では中国語、韓国との国境の島である対馬高校 では歴史と伝統を生かした韓国語の学習を専門的に行うことができる。また、五島列島最 南端に属する五島高校では、スポーツにおける実績を生かした、ハイレベルの実技指導や マリンスポーツの実習を行うことで学生の獲得を狙っている。これらの3 校における 1 年 間の留学生の募集定員は約20 名となっているが、毎年平均 10 名ほどの留学生が入学して いる(2010 年現在)。 また、県内にはこれらの3 校の他に平戸市大島にある猶興館高等学校大島分校において も 09 年度入学者まで離島留学生の募集を行っていた。本研究では、離島留学制度の事例 として五島高校と、猶興館高等学校大島分校を取り上げる。 図表2-1 長崎県で離島留学制度を導入している高校の実施例 生徒総数 留学生募集定員 生活スタイル 五島高等学校 約 630 名 約 20 名 寮 壱岐高等学校 約 650 名 約 20 名 ホームステイ 対馬高等学校 約 610 名 約 20 名 ホームステイ 猶興館高等学校大島分校 25 名 募集終了 ホームステイ 各高校のホームページより筆者作成 13 五島高等学校(スポーツコース)、壱岐高等学校(東アジア歴史・中国語コース)、対馬高 等学校(国際文化交流コース)の 3 校。

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15 (1)五島高等学校の事例 五島高等学校のある五島市は、長崎港の西方海上約 100km の五島列島の南西部、福江 島をはじめ11 の有人島と 52 の無人島により構成される。面積は、420.77 ㎢、人口は 4 万 4,765 人(65 歳以上の老齢人口は 30.5%)14である。島の主要産業は農業で、「五島牛」 をブランドとする畜産の島であるほか、毎年トライアスロンの国際大会「アイアンマンジ ャパン」が開催されることで有名で、毎年20 万人15の観光客が訪れる。島へのアクセスも 充実しており、船が1 日 8 便運航しているほか、空路も充実している16 五島高等学校は、1900 年に五島中学校として開校し、2000 年に創立 100 周年を迎えた 進学校である。09 年 4 月現在、生徒総数 632 名,教職員数 66 名と、離島の高校としての 規模は非常に大きい。普通科と衛生看護学科の2 学科を設置しており、03 年度入学生より 普通科スポーツコースを設置し、それに伴う離島留学制度を導入している。本コースは、 かねてからの五島高校運動部の強さを売りにし、大学や専門機関から招いた講師による特 別講座の開催や、マリンスポーツの実施、県立総合体育館等との連携によるトレーニング 理論などのスポーツ科学講座といった特徴的なコース設定のもと、全国レベルで活躍でき る人材を育てることを目標とし、島外からの留学生の募集を試みている。 (2)猶興館高等学校大島分校の事例 猶興館(ゆうこうかん)高等学校は長崎県平戸市にある県立高校で、本年(2010 年)度創立 130 周年を迎えた歴史ある高校である17。校名である「猶興」とは、古代中国の思想家孟 子の教えであり、その建学精神のもと、幅広い教育活動を行っている。03 年度には、理系 大学への進学を目指す理数科が設置され、普通化との2 科体制になった。 大島分校18は、1950 年、現在の県立猶興館高等学校の前身である県立平戸高等学校大島 14 2005 年度国勢調査を参照。 http://www.city.goto.nagasaki.jp/pc/policy/index57.html(2010 年 12 月現在) 15 五島市統計書(09 年度版) http://www.city.goto.nagasaki.jp/pc/policy/index57.html 観 光客数推移を参照。(2010 年 12 月現在) 16五島福江-長崎間の1 日 3 便をはじめ、五島福江-福岡間は 1 日 4 便が運航されている。 また、お盆の時期には五島福江-大阪(関空)間で季節運行が行われている。 17長崎県立猶興館高等学校ホームページを参照。 http://www7.ocn.ne.jp/~yukokan/(2010 年 12 月現在) 18長崎県立猶興館高等学校大島分校ホームページを参照。 http://www7.ocn.ne.jp/~oosima-b/ (2010 年 12 月現在)

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16 分校として大島中学校と併設した形で昼間定時制普通科として設立された。その後 1967 年に全日制普通科となり、2000 年度は創立 50 周年に当たり盛大に記念式典を挙行した。 10 年現在の生徒総数は 25 名であり、少人数学級を活かした資格取得のサポートや、個人 の希望や能力に応じた個別進路指導を重視するなどの細やかな指導を行っている。本校に おける「離島留学制度」は03 年度より導入され、10 年現在で、14 名の留学生が在学して いる。生徒数の半数以上を留学生が占める例は、県内で離島留学制度を導入している3 校 と比較しても本校のみである。また、学校の規模においても他の3 校は生徒総数 600 名を 超えているのに対し、大島分校は極めて小さい規模での「離島留学制度」を実施している 珍しい例である。本校における留学生は、ホームステイ制度により生徒だけが来村し、受 け入れ側のホストファミリー宅に同居して生活している。留学生1人当りのホームステイ 料(食費等)は、月額約7 万円だが、大島村等から補助金があるため保護者の負担は 4 万 円となっている。「しま」の教育資源を活用し、「離島留学制度」の他にも、水産教室や農 業体験学習といった特色のある教育を行ってきたが、大島分校は平成24 年 3 月をもって 閉校が決定している。これに伴い 09 年度入学生以降生徒の募集を停止しているため、留 学制度も終了する。

第3節 離島留学制度の展望

(1)離島留学制度の優れた点 現在実施されているこの離島留学制度は、単に島の生活を体験する観光目的ではなく、 実際に長期間離島で生活し、かつ専門的に学習できるという点において離島と学生の両者 間に利益があるがゆえに、優れているのではないだろうか。離島で生まれ育った生徒の多 くは幼少期から変わらぬ人間関係で育つことが多いため、島外の生徒が島に移住してくる ことで学習面、スポーツ面を通して良い刺激となる可能性がある。 (2)離島留学制度導入に関する問題 本章で取り上げた、離島留学制度が現在でも実施されている長崎県の3 校は、離島にこ そ存在しているが、それぞれ生徒数600 人を超えるなど、他の島の高校の規模を大きく上 回るほか、島自体の人口や面積も大きい。また、島の規模が大きいことから比較的島内に 観光地が多いことや、交通の便の良さ、医療環境の充実といった点から、島外出身を受け

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17 入れやすい環境が整っている。しかし、大多数である小規模離島に存在する学校では、学 校の魅力だけではなく島内の生活環境の整備も求められるため、本制度の実施は容易では ないかもしれない。また、たとえ小規模校で本制度が実施された場合でも、猶興館高等学 校大島分校のように学校自体が閉校してしまうという可能性も否めない。 (3)離島留学制度の新たな展望 しかしながら、近年では、島根県にある2,500 人規模の離島で「島留学制度」を実施し 始めた例があり、離島留学制度の実施範囲や継続性といった課題への解決へ向け、新たな 一歩が踏み出されている。長崎県における離島留学制度は、10 年現在、県が指定した高校 のみで実施されている。今後は、県は学校規模にとらわれることなく魅力のある高校への 導入を促進し、島外の学生の眼を離島に向けるべく制度拡大を行うべきだ。それに加えて、 島の高校自体も、自らの魅力とはなにかを考え、それを形にすることで、まずは、離島留 学制度を実施できるだけの魅力がある島となろうとすることで、本制度はさらなる地域へ の広がりをみせるかもしれない。

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第3章 離島地区における(小)中高一貫教育

一般的に、「中高一貫教育」と聞くと、どのような学校を思い浮かべるだろうか。多くの 人は、有名私立校や入試の厳しい進学校といった、俗に言う「レベルの高い学校」を思い 浮かべるかもしれない。しかし、離島地区における中高一貫教育となると、そのあり方は まったくと言っていいほど、異なる。筆者が高校時代まで過ごした長崎県の島では、島内 の生徒不足を補うための、いわば水際政策として中高一貫教育が取り入れられている。本 章では、離島地区における小中高一貫教育とはいかなるものかを地元である佐世保市宇久 町を事例に、その現状と、それが離島教育にどのような効果をもたらすかを考察する。

第1節 中高一貫教育とは

(1)導入の趣旨19 従来の中学校・高等学校の制度に加えて、生徒や保護者が6 年間の一貫した教育課程や 学習環境の下で学ぶ機会をも選択できるようにすることにより、中等教育の一層の多様化 を推進し、生徒一人一人の個性をより重視した教育の実現を目指すものとして、「学校教 育法等の一部を改正する法律」が98 年に成立し、99 年より、中高一貫教育を選択的に導 入することが可能となった。 (2)実施形態20・実施状況 中高一貫教育については、生徒や保護者のニーズ等に応じて、設置者が適切に対応でき るよう、3 つの実施形態がある。「中等教育学校」は、一つの学校において一体的に中高 一貫教育を行うもの、「併設型の中学校・高等学校」は、高等学校入学者選抜を行わずに、 同一の設置者による中学校と高等学校を接続するもの、「連携型の中学校・高等学校」は、 既存の市町村立中学校と都道府県立高等学校、教育課程の編成や教員・生徒間交流等の面 で連携を深める形で中高一貫教育を実施するものとそれぞれ定義されている。 09 年現在、全国における設置状況は、08 年度の 337 校と比較して 33 校増加し、370 19 文部科学省ホームページ http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/ikkan/2/gaiyou.htm 中高一貫教育の概要を参照。(2010 年 12 月現在) 20 (同上)

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19 校となっており、内訳は中等教育学校42 校、併設型 247 校、連携型 81 校である。公立の 中高一貫教育校が設置されている県は44 都道府県であり、そのうちの 41 都道府県におい ては複数校が設置されている。また、来年度以降新たに 33 校の中高一貫教育校の設置が 予定されている21 (3)都市部と過疎地での制度導入目的の違い しかし、一口に(小)中高一貫教育と言っても、その目的や形態は、学校や地域によって 大きく異なる。都市部における(小)中高一貫教育を実施する学校側の狙いとしては、いわ ゆる「進学校」として早い時期からの優れた人材の育成や獲得にある。それに対し、特に過 疎化が進行する地方においては、学生不足に伴う問題を補うための手段として取り入れら れることが多い。都市部ではより高い教育を行うことを目指し、地方では人不足の中でい かに効率よく教育を行えるかに重きを置いていることが大きな違いである。 また、都市部における中高一貫教育の新たな形態として、コースとして学校の一部に中 高一貫教育を取り入れる動きがある。栃木県にある学校法人白鴎大は来年度から白鴎大足 利中高に、「中高一貫教育コース」を新設することを発表しており、難関大学医学部への進 学を目指したハイレベルな入試対策に特化するとしている。このように都市部における中 高一貫教育の有り方は、今後一層更なる教育水準の向上を求める市民と、他校との差別化 を図る学校によって変化し、新たな形態が生まれるだろう。その一方で、地方における過 疎化や少子化が進むと、危機を救うための手段として一貫教育を取り入れざるを得ない学 校も増えるのではないだろうか。いずれにせよ本制度は今後さらに注目されることと思わ れる。

第2節 長崎県における小中高一貫教育の現状

長崎県では、生徒数や教員数の減少に伴う教育水準の低下を防ぎ、確かな学力の定着と 校種間の円滑な連携を目指し、小中高一貫教育の導入を行っている。09 年現在、長崎県内 21 文部科学省ホームページ http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/21/09/1284428.htm 高等学校教育の改革に関す る進路状況についてを参照。(2010 年 12 月現在)

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20 には10 の中高一貫教育校がある22。うち、公立は5 校(併設型 2 校・連携型 3 校)、私立は 五校(すべて併設型)である。公立で連携型をとる三校(宇久中学校・宇久高等学校、奈留中 学校・奈留高等学校、小値賀中学校・北松西高等学校)は、いずれも五島列島に属し、これ らの三校では小中高 12 年間を見通した教育課程を編成しており、教員の交流授業や合同 行事の実施などを行っている。また、本県では10 年度以降新たに公立の中高一貫校(併設 型)が設置される予定である。

第3節 佐世保市宇久町における小中高一貫教育の在り方

(1)宇久町の概要 長崎県で小中高一貫教育が実施されている島の事例として、筆者の地元である佐世保市 宇久町を取り上げる。宇久町は、少子化と高齢化が同時に進むほか、島内における職不足 や若者の島外流出といった問題を抱えている。現在島には小学校2校、中学校、高校がそ れぞれ1校ずつ存在する。05 年度までは 2 つの中学校があったが、生徒数の減少により1 校が閉校となった。また、高校においては2 つあった学科のうち商業化が平成 08 年 3 月 に閉科となり普通化学級のみとなった。生徒数の減少に伴う学校の小規模化をうけ、本町 では01 年度からの連携型中高一貫教育の実施を経て平成 07 年度より「宇久地区小中高一 貫教育特区」がスタートしている。 (2)宇久町が小中高一貫教育を実施するまでの経緯 宇久町は、97 年度より長崎県の「しま」振興若者定着推進事業の一環として、県教育委 員会より中高連携教育に関する「中高連携教育研究」の指定を受ける。さらに01 年度、 文部科学省より「連携型中高一貫教育開発校」の指定を受け、中高一貫教育が制度化され 「宇久地区連携型中高一貫教育」を開始した。05 年 2 月、小中高一貫教育の導入に向けた 研究を進める旨を知事が公表し、長崎県教育委員会は、少子化が深刻な「しま」地区(奈 留、小値賀、宇久)に児童・生徒を12 年間継続して指導する「小中高一貫教育」を導入 する方針を発表した。05 年度から 07 年度の 3 年間、「小中高一貫教育」 研究指定校とし 22文部科学省ホームページ http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/21/09/1284428.htm 高等学校教育の改革に関する進路状況についてを参照。(2010 年 12 月現在)

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21 て研究を開始し、08 年 3 月に終了、宇久地区小中高一貫教育は、08 年度より本格実施さ れている。 (3)宇久地区における特別な教育課程の内容 宇久地区における特別な教育課程の内容は以下の3 つである。 第一は、必要となる教育課程の基準の特例である。すなわち、小学校第3~6学年にお ける教科「英語科」を継続・深化することと、小学校・中学校全学年において「特別活動」 と「総合的な学習の時間」「小学校の生活科の一部」を整理・統合して新設した「宇久・実 践」を継続・深化することである。 第二は、学校又は地域の特色を生かした特別の教育課程を編成して教育を実施すること である。具体的には、小中高の教育水準の向上を図り、12 年間の一貫した流れの中で体系 的に教育活動を行う「宇久・実践」を新設する。これには、宇久地区においては、少子化 が進み「特別活動」の「集団」を通しての指導は困難であり、また学校規模が縮小し教員 数も減少傾向にあるので、多様な内容による「総合的な学習の時間」にも困難が伴うとい った理由がある。また、本地区は離島であるため、異文化にふれる機会が少ないことが大 きな課題となっているため、早期に異文化に触れて興味を持たせ、高学年以降の英語教育 への接続を円滑にするために小学校第3学年から「英語科」を新設する。 第三は、児童又は生徒の発達の段階並びに各教科等の内容の系統性及び体系性への配慮 である。生徒を前期(小1~4)・中期(小5~中1)・後期(中2~3)・高校期(高1~ 3)に区分し、小中高の学びの連続性を高め、生きる力を育み、個に応じた進路実現を図 る。 (4)宇久町の小中高一貫教育を通して 09 年における宇久高校の生徒数は 64 名と生徒数減少は進んでいるが、「宇久地区小中高 一貫教育」を推進することで、生徒一人ひとりを大切に育てる学校づくりを目指し、学力 の向上を図り多様な進路希望に対応できる進路指導体制を確立することや、スポーツ・文 化活動をとおして、心身共に健全で優しい心を持ち、たくましく生きる人間を育てること を目標としている。小中高一貫教育の本格実施により、12 年間をとおした教科・特別活動

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22 の指導内容・方法等について、小中学校・地域と連携をとりながら推進している23 これまでに、高校の音楽教師が小学校に出張授業に出向くことや、小中高合同の体育大 会や、ロードレースなどが実施されている。学校間の枠を超え、それぞれが協力し合う体 制作りに力を入れているようだ。もともと島内には学生が少なく、ほぼ全員が同じ中学・ 高校に進学するため、年齢を超えた結びつきは強いと感じるが、同時に高校卒業まで人間 関係が全く変わらないという環境は学生にとっては多少物足りないのではないか。高校卒 業後、島外へ進学・就職した若者の中で人間関係の築き方が分からず、島に帰ってくる若 者が毎年3、4名いることからも、島内だけの結びつきを強めるのではなく、島外の学校 との連携なども強めていくべきである。 図表3-1 宇久高等学校生徒数(09 年現在) 宇久高等学校ホームページより筆者作成 23長崎県立宇久高等学校ホームページ http://www7.ocn.ne.jp/~uk5955/index.htm 宇久地 区小中高一貫教育の公式サイトを参照。(2010 年 12 月現在) 学年 1 年 2 年 3 年 総計 男子 11 7 9 27 女子 10 7 20 37 計 21 14 29 64

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第4章 離島教育の新たな展望―島内の教育環境の充実へ―

これまでに、2 章では離島留学、3 章では小中高一貫教育と、離島教育に関する 2 つの 政策をみてきた。離島教育の向上にはこれらの政策とともに、島内の環境整備が大きな役 割を担ってくる。しかし、離島地区にあっては、中学校までは島にあるが、高校は島にな く、島外に出なければならないといった現状状況が多く見られるほか、塾や家庭教師とい った学校以外の教育機関が乏しいという課題もある。こういった離島におけるハンディと も呼べる状況が、本土地区との教育格差に繋がらないために、島が主体となった取り組み の必要性を問いたい。また、更なる教育環境の充実を目指し、島内外との連携についても 考察していく。事例として、島内の教育環境整備へ向け積極的な取り組みを行っている島 根県と鹿児島県の2 島を取り上げる。

第1節 島内における積極的な教育環境づくりの重要性

(1)島根県海士町の取り組み-公営塾や留学制度による魅力的な環境を目指して- 島根県は、369 の島々を有し、その数は長崎、鹿児島、北海道に次ぐ全国 4 位となって いる。 そのうち、有人島は 6 島で 2 万 4,421 人の人々が生活している24。島根県の島では、 領有権で揺れる竹島(韓国では独島)が有名であるほか、歴史的には隠岐諸島が遠流の島と して知られている。今回は、この隠岐諸島の中の一つ、中ノ島(海士町)という一島一町の 小さい島25の取り組みを紹介する。 海士町(あまちょう)は、多くの離島と同じく人口減少と少子高齢化という問題を抱えて いる。1950 年当時には 7,000 千人の住民がいたが、近年では 3,000 人を下回っており、そ の4 割が 65 歳以上と高齢化は進む。島の規模は決して大きいわけではないが、近年は観 光に力を注いでいることから、毎年多くの観光客が訪れるだけでなく、I ターン者の多い 島としても有名で、メディアに取り上げられる機会も多い。 この島に唯一ある高校は県立隠岐島前高校(以下、島前高)である。生徒数の減少は激し く、40 年前に比べると 3 分の 1 まで減った。これに加えて島前高では生徒だけでなく、教 員数も減っており現在では物理教師がおらず、理系の進学指導が難しい状況だという。こ 24 2005 年国勢調査合計による。 25 面積 33.46k㎡、周囲 89.1 ㎞

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24 ういった事情から、大学進学をめざす生徒は中学卒業後、家計が許せば下宿して島外の高 校へ進学するケースが多い。中ノ島(海士町)と近隣の西ノ島(西ノ島町)、知夫里島(知夫 村)には合わせて三つの中学があるが、08 年度はその卒業生のうち 55%が島外の高校へ 進学した。 海士町や近隣の役場は、この現状に危機感を募らせて、「高校の問題は、すな わち島全体にとっての死活問題」という認識のもと、島外からの移住者と協力しアイデア を出し合い、昨年 09 年に「島前高校魅力化構想」をまとめた。海士町ではこの「島前高 校魅力化構想」の元、島の高校の存続と将来の町のために魅力のある教育政策を行ってい る。 (図表4-1) 図表4-1 海士町教育委員会の構成図26 学校教育課 学校教育係 教育委員会 地域教育課 地域協力係 島前高校魅力化プロジェクト 学習支援 (高校魅力化部会) ・寮の利活用 ・部活支援 ・高校と地域の連携 ・島内外との交流・PR 保護者負担の軽減 海士町の教育委員会には島前高校魅力化高校魅力プロジェクト(高校魅力化部会)が設け られ、学習支援のほか、高校と地域の連携や島内外との交流・PR など、内外から生徒が 集まる魅力的な島前高校づくりに向けての支援を行っている。 26隠岐郡海士町オフィシャルサイト「組織図」 http://www.town.ama.shimane.jp/gyosei/soshiki/を参照。(2010 年 12 月現在) 隠岐郡海士町オフィシャルサイトより筆者作成

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25 また、今年度(10 年度)より、海士町では以下の 3 つの取り組みが実施されている27 (図表4-2) ①島前高校における 「2コース制」の新設 「地域創造コース」は、想像力・主体性・コミュニケーション能力など地域社会で自立・ 活躍するための総合的な人間力を徹底的に磨き上げるコースで、豊富な地域資源を活かし た「夢探求」「環境学」「地域創造」など独自のカリキュラムで次世代の地域リーダーを育 てる。推薦・AO 入試を通して難関大学への進学も可能である。「特別進学コース」は、生 徒一人ひとりの進学希望の実現を目指し、超少人数指導で学力を徹底的・飛躍的に高める コースで、個々に応じた充実した個別指導も受けられ、旧帝大・難関国公立大学・有名私 立大学への進学も可能である。 ②公営塾「隠岐国学習センター」の設置 難関大学への「進学保障」に向け、最先端の教育メゾッド・システムを導入した公営塾 を設置した。学校と、家庭の教育力をさらに補強するため、ICT(情報通信技術)や最先端の 教育システムを活用しながら、離島のハンディをなくし、生徒一人ひとりのニーズに応じ た進路保障へ向けた支援体制を整備している。生徒の指導役を務めるのは「学習コーディ ネーター」28と呼ばれる指導者で、全国から公募し受験指導や講師の経験のある人が就い ている。 ③充実した「島留学制度」の創設 今年度より、島外から島前高校の寮に入る生徒を対象に、寮費の全額補助、食費・里帰 り交通費などを補助している。国内でも特に治安の良い島の環境に加え、島前高校の寮は 学校隣接のため、安心安全であるほか、寮内では現役教員による夜間の学習指導や進路相 談、集団生活を通して主体性と社会性を身につける全人教育を行っている。 27 「季刊しま」No.220 を参照。 28 個々の生徒の学力や志望校の難易度に合わせて教えていくスタイルを取っている。

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26 島前高校 隠岐の国 学習センター 図表4-2 海士町における島内の連携のイメージ 現在海士町では、「島前高校」と「隠岐の国学習センター」「島留学制度」の3つがそれ ぞれ、積極的な取り組みを行っているだけでなく、これらが連携することで、島の環境整 備の充実を図っている。また、「島留学制度」を通し島外の学生を受け入れることで、島前 地域と島前高校、島根県が連携して全国から人が集まる特色ある学校づくりに取り組んで いる。平成21 年度は地域観光プランコンテスト(文部科学大臣賞)を獲得、魅力と特色ある 教育実践校として表彰も受けている。海士町におけるこのような取り組みは、各機関が連 携することで島全体の教育環境を整えようとするものであり、決して規模の大きくない島 のモデルとなる取り組みだと考える。 (2)沖縄県北大東島の取り組み-日本初の村営塾のゆくえ- 離島の自治体が運営する学習塾には、先例がある。沖縄本島の東360キロの太平洋に位置 する北大東島(沖縄県北大東村29)の村営塾「なかよし塾」である。 「なかよし塾」は、 日本初の村営塾として、1993年に開設された。ふるさと創生事業で建てた住宅を塾とし、 講師は定年退職した元教師を対象に全国から公募している。「なかよし塾」は運営方針を、 学校及び保護者との連携のもとに学校教育の目標・方針等を十分理解し、「意欲をもって主 29北大東島(周囲 13.52km 面積 11.94km2)と沖大東島(周囲 4.5km 面積 1.15km2)の2島か ら成る村。北大東島までは、那覇空港からおよそ1 時間 10 分。 島留学制度 隠岐郡海士町オフィシャルサイトより筆者作成

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27 体的に学習に取り組む姿勢の確立」と「基礎的な英会話能力の向上」を目指して、一人一 人の実態に応じた指導を行うこと、としている。指導方法は講師独自のノウハウに任され て、現在の講師は、昨年4月に着任した沖縄本島出身の元高校教師で、小中学生に国語、 算数・数学、英語を教えている。小学3~6年生は午後5時から1時間半、中学生は午後8時か ら2時間、勉強する。塾の時間は子どもたちが遊ぶ時間を設けるため遅めに設定し、親が送 り迎えをしている。 村教委によると、大学・短大への進学率は93年の18%から10年で38% に向上した。仲良し塾は、平成10年には、国土庁の過疎地域自立活性化優良事例表彰30にお いて「国土庁長官賞」を受賞するなど功績を残している。下の図表4-3では北大東村の 教育環境の全体図を示した。 図表4-3 北大東島の教育環境 北大東島ホームページより筆者作成 北大東村にある幼稚園・小学校・中学校の規模は非常に小さいものとなっている。また、 島内には高校がないため、大半の生徒は中学卒業後沖縄本島の高校へと進学する。島内で 生まれ育った子供達は幼少から幼馴染のような関係を築いており、非常に仲が良いが、学 30地域の自立と風格の醸成を目指した過疎地域の取組みを奨励するため、創意工夫をもっ て過疎地域の活性化に取り組み、すぐれた成果を上げ、過疎対策の先進的、モデル的事例 としてふさわしい団体であること等を審査の基準として、優良事例表彰団体を選定してい る。 複式学級 沖縄本島の 高校へ 北大東幼稚園 21名 北大東中学校 29名

なかよし塾

・村が運営 ・平日開校 ・英語/数学(算数)/国語 北大東小学校 46名

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28 習面における生徒間の競争心や刺激は少ない。また、生徒たちが家に帰ってから学習する 習慣が極めて低いことも課題であった。これらを改善し、学校外でも勉強する習慣を身に つけさせたいと、村営塾は開設された。現在では教科の講義だけではなく、講師の判断に より各学年週一回、講師のノウハウを活かした「講話等」を授業時間に組み入れてい る。10 年 7 月からは、授業料が見直され、これまでの小学生一人につき 2,000 円を 1,500 円に、中学生一人につき 2,500 円を 2,000 円に、同一世帯から二人以上は 3,000 から 2,500 円に減額された。

第2節 島外と連携した教育の推進

島内の環境整備とともに、離島教育において重要であるのが、島外との関係性である。 先にも述べたとおり、離島地区に暮らす生徒の多くは、幼少からさほど変わらぬ人間関係 の中で成長するため、自分の学校以外の人との関わりは全くないと言っても過言ではない。 そのため、学習面や部活動といった面において、本土の生徒との力の差が生まれることが ある。そのため、離島地区の学校においては、島外との連携を強める必要がある。 本論文で取り上げた島から、島外との教育連携を行っている事例をあげる。3 章の小中 高一貫教育の事例で扱った佐世保市宇久町にある宇久高等学校吹奏楽部では、定期的に長 崎本土の高校や、五島列島の他の島の高校と合同練習を行っている。また、個人の技術を さらに高めたい生徒には、本土の高校での個人指導を推薦し、受け入れ先紹介も行ってい る。 2 章で取り上げた離島留学制度を導入している長崎県対馬市では、来年度から「ビデオ 講座」を始める31。島内には大手進学塾や個人塾といった民間教育機関も充実しており、 島内の教育環境の整備と島外との連携が上手くできている例である。 31 長崎県対馬市市長 財部能成氏インタビュー(2010 年 11 月)より。

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おわりに

これまで、離島における教育政策の事例をあげながら、離島教育の課題と新たな可能性 について論じてきた。第1 章では、離島の概要を整理した後、離島地区が抱える少子化に よる生徒数不足・学校規模縮小といった教育の問題点を述べた。第 2 章では、「離島留学 制度」に着目した。この制度は、外から人を呼び込もうとする取り組みのため、住む場所 をどうするかといった受け入れ態勢の強化が今後一層求められるであろう。第3 章では小 中高一貫教育のありかたを、離島地区と都市部との導入目的の違いを含め、説明した。 長崎県にあっては、離島県ということから、離島地区の教育を研究するのに適していた。 その中で、今回取り上げた政策のうち、「離島留学制度」は、比較的規模が大きく生活環境 が整った島での、さらに学校規模拡大を狙った積極的な政策である反面、「小中高一貫教育」 は本当に人口減少に悩む島に対して講じている消極的な政策であるように思われる。 一概に離島と言っても、100 人未満の島から 3 万人を超える島まで、多様であるため、 当然、効果的な政策も異なってくるが、教育環境の整備が離島の魅力拡大への材料となる ことは変わりない。魅力のある教育環境を作るには、離島地区は、生徒数の減少や学校規 模の縮小という現実を受け止め、規模が小さいからと教育水準や、実施できる政策に限り があると諦めずに、教育を学校だけに頼るのではなく島全体で行っていくことが大切であ る。そのためには、4章で述べたように、「島内の環境整備」と「島内外との連携」が最も 重要であると考える。中でも、これからは、町や村が主となった学校以外の教育機関の充 実へ向け、新たな取り組みを行っていく必要があると言える。 魅力のある教育環境とはいかなるものだろうか。離島地区におけるそれは、「恵まれた自 然環境の中で学ぶことができる」ことや「暖かな人間環境の下で過ごすことができる」な どといった、学力面とは少しずれた要素が挙げられてきたように感じる。しかし、それは 離島で育っていない者の意見だ。筆者自身高校卒業まで島という極めて小さいコミュニテ ィーの中で育ってきたが、「島の子供はみんないい子で仲良し」などとは絵空事で、都会の 学校と同じように、いじめもあれば、非行に走る者もいた。 また、学校規模の縮小は同時に、様々な能力を持ったものが1つの教室で学ばざるを得 ない状況を作り出すことを意味する。クラス編成をするだけの生徒がいないため、高校に おいては、進路を決定する重要な時期に、進学希望者も就職希望者も同じ内容の授業を受 ける。島の高校に進学したところで、ろくな勉強はできないからと、勉強したいものは家

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30 族が許せば中学卒業時に島を離れていく。島から子供が離れていっているようでは、その 島は住みやすい島とは言えない。それはつまり、島自身の魅力のなさをアピールしている ようなもので、いくら特産品や観光などで、外から人を呼び込もうとしても、長い目で見 ると、島自体の活性化には繋がらないのではないか。 「定年後は島でのんびり暮らしたい」という定年間近の人の声が多く聞かれたのは、す でに一昔前のことで、現在では働き盛りと呼ばれる年代の人々も島暮らしに憧れ、I ター ンという形で住みやすい島へと移住している。島にとって格好の活性剤となるこれらの 人々の足止めとなっているのは、交通の便の悪さや、医療機関への不安、そして、子供の 教育問題である。海士町の言葉を借りるとすれば、つまり学校の問題は、島にとっての死 活問題と言える。 本研究では、このような認識の元、教育こそが島の未来を占う重要な課題として離島地 区における教育政策について考察してきた。離島留学制度・小中高一貫教育・公営塾のい ずれを取ってもまだ新しい制度であるため、数年後にはなくなっているかもしれないが、 行政も、島民自身も、離島地区には常に新しい教育政策を行わなければならないという意 志を続けることが重要だ。今回取り上げた取り組みのうち、どれか一つでもその島に定着 し島内の教育環境の向上と島内外との連携が成功する例が生まれ、いずれ教育立島として の地位を確立する島が現れることを、ここに希求する。

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あとがき

卒論に一区切りが着こうとしています。3 年前期にはじめてこのゼミ室に入ってからの ことを思い出しました。本当に長い時間を4 年生 3 人と助け合って過ごしてきたので、最 後の文を私一人で書いているのは、どこか寂しいです。思い返せば、入学当時はまさか卒 論で「島」のことを書くとは思ってもいませんでした。私の中で離島出身ということは、 コンプレックスでした。だから今、こうやって島を題材に卒論を書き終え、その過程で出 会った人や協力して下さった人のことを考えると、本当に不思議な気持ちになります。 特に、日本離島センターの水さん・小澤さんには、中村先生を通じて本当にお世話にな りました。離島出身の私よりも、離島のことを考えている人がいることを、私はお二方と 出会ってはじめて知りました。そして、お二方を通して、これまで全く関わりのなかった 他の島の方との繋がりも生まれました。今回インタビューさせていただいた対馬市の財部 市長をはじめ、海士町の山内町長など、この出会いは本当に貴重で有難いものです。私の 力だけでは決して「離島教育」というテーマでの論文を書き終える事は出来なかったと思 います。本当に感謝しています。 手探りで始めた「島」の研究でしたが、意外にも「本土の人間」は「島の人間」に好 意的であることが分かりました。ただ、栃木に出てきてから一度だけ、本当に傷ついた言 葉がありました。「島なんてろくに税金納めてないんだから、なんの政策もいらないんだよ。」 こう言われた時、私は何も言い返せませんでした。悔しさとともに、確かにそうかも、と いう気持ちがあったからです。「島」を馬鹿にする人がいるから島の人間は弱くなる。しか し、そうではなく、何を言われても堂々としていられるような島になればいい。そう今は 思います。今回離島の、特に教育に焦点を当てたのは、私自身離島の弱さは教育現場にあ ると考えたからです。子どもが島を好きになるような教育はほとんどされていないように 感じてきたからです。だから、教育環境から変わればいい。島の子どもが大人になっても 住みたいと思うような島になればいい。島の人間が島を愛することこそが、島の魅力とな って人を惹きつけるのではないかと思うのです。 ここまで卒論を書くのに、途中大きく行き詰った時期がありました。自分の知識のなさ と、思ったように資料が集まらないことで、投げ出したくなりました。その時期に、励ま し、アドバイスを下さった舘野さん、中山さんをはじめとする院生の先輩方にはとても感 謝しています。特に、舘野さんの言葉で印象深かったものがあります。「君たちは私よりも

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32 若いんだから、頭で行き詰ったら、足を使えばいい。まず動かなきゃ、行かなきゃだめだ。」 この言葉で、動こうという気力が驚くほど湧いたのを鮮明に覚えています。この先、同じ ように行き詰ることがあっても、私はこの言葉を思い出します。 3 年生へ、3 年生がジョイントやまちづくりと、とても忙しそうに頑張っているのを見 て、何度も自分も頑張らなければと思えました。ジョイントで仲良くしてもらえて本当に 嬉しかった、ありがとう。 留学生の 3 人へ、3 人からは学ぶことがとても多かったです。3 人の日本語の上達の早 さはもちろんのこと、特にパソコンの操作は、本当に「すごい」の一言でした。私は日本 語ですら理解できないのに。そしてなにより3 人の笑った顔が好きです。 赤澤さん、滝田さん、卒論本当に本当にお疲れさまでした。「あとがき」まで辿り着いた このなんとも言えない感覚は、卒論を書いてみないと分からないですね。私たちは、3 人 ということで2 人とは 3 年時から色々な思い出があります。思い出していると寂しくなる のでこのへんにします。残りの時間もよろしくおねがいします。 最後に、中村先生へ、私はこのゼミに入ってよかったと思った瞬間が2 回あります。一 度は、昨年のジョイントとまちづくりが終わった瞬間でした。あの時は週6 日ほどゼミ室 に籠って、時にはそのまま朝を迎えて、厳しすぎる大宅さんの指導に泣きたくなりながら も、何とかやり終えました。あの時に研究の楽しさを知りました。そして、二度目が今で す。こうやって論文を書き終え、やはり昨年と同じような、なんとも言えない充実した気 持ちと達成感でいっぱいです。行き詰った時も、常に優しく指導していただき本当にあり がとうございました。「もう書けない」と思った時も、先生のいつも何かに追われるかのよ うに頑張っている姿を思い出して、私も頑張ることが出来ました。このゼミに入り、先生 のもとで離島の研究ができたことを心から嬉しく思います。本当に感謝の気持ちでいっぱ いです。ありあとうございました。

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参考文献・参考資料・参考

URL・インタビュー協力

<参考文献> ・「季刊しまNo.220 Vol.55-3」財団法人日本離島センター <参考資料> ・2008 離島統計年報 ・日本離島センター資料「南種子町宇宙留学制度実施要綱」 ・日本離島センター資料「海浜体験留学生 募集!」 ・日本離島センター資料「説明会 海浜体験留学 面接会」 <参考URL> ・長崎県公式ウェブサイト http://www.pref.nagasaki.jp/ ・長崎県教育委員会ホームページ http://www.pref.nagasaki.jp/edu/about/plan/index.php ・日本離島センターしましまネット http://www.nijinet.or.jp/study_abroad/index.html ・長崎県教育丁高校教育課ホームページ http://www.pref.nagasaki.jp/koukou/plaza/index04.html ・2005 年度国勢調査 http://www.city.goto.nagasaki.jp/pc/policy/index57.html ・五島市統計書(09 年度版) http://www.city.goto.nagasaki.jp/pc/policy/index57.html ・長崎県立猶興館高等学校ホームページ http://www7.ocn.ne.jp/~yukokan/ ・長崎県立猶興館高等学校大島分校ホームページ http://www7.ocn.ne.jp/~oosima-b/ ・文部科学省ホームページ http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/ikkan/2/gaiyou.htm

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34 ・長崎県立宇久高等学校ホームページ http://www7.ocn.ne.jp/~uk5955/index.htm ・隠岐郡海士町オフィシャルサイト http://www.town.ama.shimane.jp/gyosei/soshiki/ <インタビュー協力> ・日本離島センター 水昭仁氏 小澤卓氏(2010 年 11 月) ・長崎県対馬市 市長 財部能成氏(2010 年 11 月)

参照

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